01 読みもの

やんばるアートフェスティバル 2017-2018 ヤンバルニハコブネ

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地域を舞台にした現代芸術祭やアートプロジェクトが全国に広がり続ける日本。その中にあって、ありそうであまり展開されてこなかった沖縄県において、これまでと趣が異なる企画が2017年末、たて続けに開催された。離島そして小規模自治体初の開催となり島からアートプロジェクトをたちあげることを念頭に置いた『文化庁メディア芸術祭石垣島展』、沖縄県の特異性が生んだ最先端科学の拠点(沖縄科学技術大学院大学)において展開する『人工知能美学芸術展』、そして、観光振興を第一に置いた『やんばるアートフェスティバル』である。

これらは、独自の風土によって本島とは異なる成長をみせる離島(石垣島)、わが国の中でも特別な位置づけにある地域だからできた企画(人工知能)、そして、新たな観光価値の創出(やんばる)という、沖縄が持つ多様性を反映した未来志向型の企画であるということができる。

沖縄において同時期に開催したこれらユニークな企画の中から最初に、これまで地域活性化が目的であっても、美術の真正性、もしくは「文化的」な取り組みを第一に置いてきた、わが国の地域でのアートプロジェクトにあって、第一に観光振興を掲げて開催した『やんばるアートフェスティバル』の模様を紹介する。

アートは自然豊かな「やんばる」に新たな観光を創出できるか

『やんばるアートフェスティバル』は、観光により成長を続けている沖縄本島において、那覇から最も遠い地域にあるため足を運ぶ人が少ない一方、1997年に新たな国立公園に指定されるように豊かな自然風土がある、北部「やんばる地域」の観光資源を「アート」の魅力によって発信する企画として、2017年12月9日から翌年1月21日まで開催の沖縄ではじめての広域展開の地域型芸術祭である。

第一回目の今回、都会である本島南部と異なり、アートそのものとの接点も薄かった「やんばる」地域にプロジェクトをインストールするにあたり、環境づくりの趣が深くとれる内容であった。海洋博公園やオクマプライベートビーチ&リゾートほか、北部地域全体に展開する会場の多くは、ワークショップ等のイベントの実施、もしくは既存の観光や体験施設の中に慎ましやかに作品が配される設定にあり、ほとんどの展示作品は静かな入江に面した廃校(大宜味村立旧塩屋小学校)に集約している。

作品は、なるべく多くの沖縄の今の文化に触れてもらいたいという企画者側の思いが感じられ、照屋勇賢、藤代冥砂など、沖縄で活躍する各分野の作家による展示に加え、椿昇やキュンチョメ、淀川テクニックなど、地域から着想を得た作品づくりに定評のある現代作家を配した展示となっている。

【以下3枚『完璧なドーナツをつくる』キュンチョメ】

【下:淀川テクニックによる作品】

地域性を重んじるアプローチは、沖縄の風土が生み出している伝統から現代まで続くクラフトをアートと同じくもうひとつの柱として置いている点にある。廃校の展示では、美術作品を置いた教室とともにクラフトを置いた教室が同じように配されており、芭蕉布や紅型にはじまり陶器や木工など、新たな世代へと伝承が続くいい仕事と触れられる展示がなされ、一部の作品は購入が可能となっていた。

出展作家であり、芸術祭のコンセプトにも深く影響を及ぼしている、椿昇がアートプロジェクトを通じて発展をもたらした小豆島で掲げていたキーワード「観光から関係へ」を彷彿させる光景を垣間見ることができる。美しい入江を望める、廃校のガラス張りの体育館には、椿氏のグループがその場でつくり出した和めるベンチやテーブルなどのインテリアが置かれ、コーヒーが振る舞われ、地域の人々が作品に親しみながら集えるサードプレイスが生まれていた。アートと工芸の二本足もまた、クラフトを探訪することによる文化観光への誘いを催すものである。

一方で、書家で知られる紫舟による3D造形による書や「墨絵」、独自の絵本創作で人気を集める西野亮廣のコラボレーション作品など、一般の人々を掴む「有名人」による作品をミックスするなど、観光としてのアートプロジェクトに向けて敷居を低くする仕掛けも盛り込まれていた。

【下:紫舟による作品】

沖縄県独自の予算処置から生まれた『戦略的課題解決型観光商品等支援事業』の適用を受け、観光を第一にあげながら、この芸術祭の一回目を通じて多くの人を集めようというよりも、まずはアートやクラフトによるツーリズムの種を地域にもたらそうとしているように感じられた。

「沖縄」的「観光価値」創造が「ソーシャルキャピタル」へと進化することを期待

真価は今回というよりも、これまで行われてこなかった場所にアートがインストールされ、地域の人々や自治体が可能性を感じ、「やんばる」のより多くの潜在的な魅力を持った場所で展示を行いたいという機運が以降、生まれるかにかかっている。その点において、入江に佇む「美しい廃校」を最初のメイン会場とできたことは幸運であり、地元の要請にもあり実施期間が2週間も伸びきゅ、これまで行われてこなかった場所にアートがインストールされ、地域の人々や自治体が可能性を感じ、「やんばる」のより多くの潜在的な魅力を持った場所で展示を行いたいという機運が以降、生まれるかにかかっている。その点において、入江に佇む「美しい廃校」を最初のメイン会場とできたことは幸運であり、地元の要請にもあり実施期間が2週間も伸びきゅたことはまさにソーシャルキャピタルの芽生えである。

【下:淀川テクニックによる作品】

【下:椿昇による作品】

地域でのアートプロジェクトがもたらす最大の価値であるソーシャルキャピタルが芽生えること、すなわち関係を通じて、アートとクラフトによる新たな文化観光を「やんばる」で創出することができるか。同展から始まるインパクトこそが、見どころであるといえよう。

やんばるアートフェスティバル2017-2018 
~ヤンバルニハコブネ~

開催期間 2017年12月9日~1月21日

主催 やんばるアートフェスティバル実行委員会

会場地域 大宜味村立旧塩屋小学校を中心に「やんばる」地域一帯(大宜味村・国頭村・本部町・名護市)

URL http://yambaru-artfes.jp/

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